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2005.03.20

常識的でないバッハ――シェメッリ賛美歌集より(2)

まぁ、とにかく、したがって、シュミーダーのつけたBWVの妥当性を
論するのも難しい、と、こういうことになるわけ。

ところで、今回はバッハの何の曲をとりあげようか。と考えたら、シュミーダー
の整理分類の、もうひとつの疑問について、どうしても触れたくなってしまった。

僕の手元に「バッハ・歌曲とアリア集」という楽譜かある。

もう一度、横道に逸れてもいい?

バッハのこのジャンルはいささか一般性を欠く、といっていいだろう。
歌曲といやぁシューベルト。そしてシューマン、ブラームスにヴォルフ。
あるいはフォーレやドビュッシー。バッハの歌曲? ましてアリアだって?
アリアといやぁオペラだ。バッハにオペラかあったっけ?

バッハと同い年のヘンデルは、オペラを50曲近く書いた。
だが、一生をほとんど教会音楽に捧げたバッハはオペラを書かなかった。
しかし、《コーヒー・カンタータ》の折に話したけれど、バッハが
山ほど書いたカンタータは実質上オペラみたいなものなのだ。

それに「アリア」はオペラのものとは限らない。
カンタータやオラトリオの中にもアリアはあるし、単独でアリア、
ということもあるわけ。

ところで僕の手元の「バッハ・歌曲とアリア集」。中はいくつかの部分に
分かれていて、うちひとつが《シェメッ賛美歌集》というもの。
BWV439から507。つごう69曲だ。

《シェメッリ賛美歌集》というのは1736年にライプツィヒで出版
されたもので、作者の明記なしで、なんと954曲も載っていたらしい。
うち69曲だけ「通奏低音」付き。この曲集にバッハが関わったことは、
その序文で判明するらしいから、バッハ研究家の先生方は、すなわち
その69曲をバッハの作と判定したのだろう。そして、僕の手元の楽譜には
その69曲か載っている、というわけだ。

ところが、ですよ。

シェーリングという人の研究で、バッハの真作は実はこのうちのたった
3曲にすぎないことが分かったのである。69曲だと思ったら、
たったの3曲! ナント!

ところが、ですよ。

このシェーリングの研究は、1924年に発表されたという。

あれ?

シュミーダーの「BWV」は1950年。シェーリングから約四半世紀あと。
なのに、真作3つではなく、なぜ69曲全部にBWV番号を付けてしまった
んだうう。

ウーム……。と、ここでシャーロック・ホームズ(今回の人物名はシャ、シュ、シェ
ばかり。ちとややこしい)はひと声うなって腕を組んだのであった。
なんて冗談はさておいても、たしかに変だ。

シェーリングはBWVを認めなかったのだろうか。研究家どうしの対立か
何かなのだろうか。あるいは69曲全部の通奏低音だけは、まちがいなく
バッハの手によるもので、したがって番号を付けて然るべきだったのだろうか。
まぁ、いかんせん僕はまったくの門外漢。フシギ、フシギとだけ騒いで、
ここは先へ。

「3曲だけ」説でいこうか。シェーリングは、BWV452、478、
505がその3曲、と言っている。じゃなかった、BWVの方が
あとなのだから、「BWVか付いてしまった69曲のうち、この3つだけ
バッハ作」と言わなければならない。

 バッハの音符たち ―池辺晋一郎の「新バッハ考」― より
  バッハの音符たち―池辺晋一...

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